久々に読み返してみたら、やはり名作。
特に最終巻は圧巻です。
基本的にはミステリー仕立てのストーリーですが、そこに留まらない重厚なテーマが描かれていたと思います。
時は昭和29年、舞台は神戸。ニートの天野は、幽霊塔と呼ばれる時計塔で、白い何者かに襲われ死の寸前、謎の美青年・テツオに救われる。テツオは曰く「幽霊塔の財宝探しを手伝えば、金も名誉も手に入る」しかしテツオの正体は、男を装う女であり、その名も偽名であった・・・・・・・・
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この話メインの登場人物はみんな心になんらかの強い思いを抱いています。
そして、そのままではうまく生きられないからこそ、自分の生きる道を探すためにもがき戦う姿が本当に魅力的。
主人公 太一は落ちこぼれのニート。常に周りの人たちに馬鹿にされる存在で、自分自身にも未来にも何の価値もみいだせずにいます。
もう一人の主人公 テツオは資産家の養女であり、良家の子女として生きることを望まれながらも心は男性。
女として生きていくことを受け入れることができない。
主人公たちとチームを組む刑事の山科は少年しか愛することができない。
丸部の娘、沙都子は丸部の協力な支配から逃れたいと思いつつも、逃れることも一人で生きることもできずにいる。
みんな、社会にも家庭にも居場所のなく、本当の自分を押し殺して生きている人たちです。
彼らが幽霊塔の財宝探しや次々と起こる殺人事件の真相を探す中で、自分と向き合い、仲間と向き合い、居場所を探していく姿には強い感動を覚えます。
苦しんでいるからこそ、苦しむ人たちに手を差し伸べることができる。
今よりももっと重圧の強かった時代、戦う道を選ぶ太一にはゾクゾクしちゃいます。
そして、ラスボス丸部もまたあっぱれな人ですよね。
ラストシーンも本当に感動的。
東京タワーよりも高い塔はたったけれども、未だ、居場所がなくて苦しむ人たちはまだたくさんいて、それでも、昔より今はずっとよくなっていると思います。
そしてもっと良い明日のために戦いは続くんだよね。
最終巻の表紙みたいにこの二人が笑える世界であるために。
ちなみに、私が一番好きなキャラは沙都子。
物語を通してみんな変わりましたが、彼女の変わりっぷり(成長っぷり)はすごいですよね。
最後、銃まで扱えるようになってるし…。
やはり戦う女性が好きなのです。
あと、最終巻、テツオがキスする前に、「失敬」っていうの、ちょい悪紳士って感じでめちゃかっこよくないですか?色男~!
沙都子がテスラの研究所に乗り込んだのは二重になりたかったから。 |