ロマンチックの極致【天は赤い河のほとり】

最近、宝塚で天河が上演されてましたね。
宝塚にちょっと興味があったのと天河が非常に好きなのとで観に行ってきました。
テーマソングが耳に残るかっこよさだったこともあり、それ以来毎日You Tubeの天河のCM(?)観てます。


宙組公演『天(そら)は赤い河のほとり』『シトラスの風-Sunrise-』初日舞台映像(ロング)

DVDも買ってしまった~。
改めて観ると本当に、天河最高!って気持ちが蘇りますね。
私が天河を初めて読んだのは10歳の時だったので、ちょっと刺激的な話でしたが、ものすごくはまって、コミックスが待ちきれずすぐに少女コミックを毎号買って追いかけるようになりました。
私が少女漫画を好きになるきっかけとなった話なので思い入れが深いです。
大人になってからハットゥサの遺跡にも行きました。
それ以来、私は何年かに一度、何かのきっかけで天河最高!って気持ちになるんですが、宝塚みて以来、またそういう気持ちになってます。
なにがこんなに最高なのか…。天河はなぜこんなに私の心をつかんで離さないのか。
それはきっとこの物語がロマンチックの極致だからです。
大きく挙げると下記の2つに集約されるのかなと思います。

 

・ユーリとユーリを愛する男性たちのかっこよさ
・物語を彩る印象的な背景

✔  ユーリとユーリを愛する男性たちのかっこよさ

やっぱり登場人物たちがかっこいいってのは本当に大事だと思います。
私がかっこいいと思ったセリフもひとつづあげていこうと思う。

ユーリ

「あなたの手に、オリエントの覇権を!!」天は赤い河のほとり12巻より

 

よくやっかみのモブたちに小さいとか美人じゃないとかけなされているけど、彼女のスペックは実は超高いですよね。


・モブ兵士数人くらいは一人でやっつけられる
・天下分け目の決戦でエジプト軍をやっつけられる
・烏合の衆を反乱軍に作り上げられる
・戦争の講和会議を仕切れる
・製鉄法保有
・着飾ると超美人
・ダンスもうまい
・健康(伝染病にかからない)
・体力(2~3日背中に矢をはやしても平気、ライオンを丸腰で抑え込む)
・ド根性
・人望ありまくり(後見は民衆)


 外見的なところでいうと、普段はあんまり美人じゃないってとこもいいんだろうなと思います。着飾ると超美人というギャップ設定はかなり好きなんですけど、一方で、ユーリはどろどろの時もけっこうきれいだとか言われている。ただ、その場合は彼女の心映えが美しさがにじみ出て美しく見えるということようで。どんな相手でも分け隔てなく接する姿や一生懸命に人の世話を焼く姿をみている人々にはまあ普通の子だけど、なんかきれいに見えてくるね、みたいな。少女漫画って、やはり主人公はある程度普通の少女じゃないと読者が感情移入しにくい部分もあると思うので、ここらへんはいい落としどころだなと思います。


 まあ一見普通の女の子に見せて、実は強く賢く美しく、重要な場面では必ずかっこよく決めてくれるユーリのかっこよさだけで、けっこうこの話はおもしろく読めると思う。

 冒頭であげたセリフは12巻でユーリとカイルの別れのシーンのセリフ。ユーリがカイルに言い残していくセリフです。ここが最高にクール。オリエントの覇権を左右する力を持ってるんだよ、彼女は。そして、もう二度と会えない最愛の人のために、その力を捧げるという姿が本当に切ない。8巻の誰が花婿一行を襲ったのか?の王妃との論争もユーリが最高にかっこいいシーンの一つだと思います。カメラもない、科学技術による鑑定もない目撃者が自分しかおらず、だれにも信じてもらえない中、ユーリは言い逃れできない証拠を王妃に見せつけます。そのために彼女は死線をさまよう苦しみを味わうことになるのですが、その強い意志(ド根性)で乗り切って王妃を追い詰めます。ヒロインがかっこよさの大事さを教えてくれますね。

カイル

「ハットゥサきってのプレイボーイの面目にかけて、まだお前に手を出していないなんて皆に知られたくない」天は赤い河のほとり1巻より

 カイルは少女漫画の主人公の王道ですね。なんてったって皇子です。冒頭のセリフは1巻のセリフです。この頃は割と軽いことをばんばんいうカイル皇子。後半になると立場も重くなり、ユーリしか見えない溺愛ぶりですごい重くなります。最終的に彼は皇帝になりますし、前半の軽さは消えて、本当に重厚な皇帝の愛といった感じになります。その重たさは別の意味でまたいいんですが。ただ、 私は前半の軽めの頃のカイル皇子が割と好きです。軽くてセクシーでちょっといじわるなところがあったりもして。

 

 カイルは完璧超人ですね。賢く美しく強く身分も高く徳もすぐれている。ただ、23巻の「おまえの身体にはわたしの知らないクセはついていない。わたしが教えたとおりに反応する」発言は好き嫌いが分かれると思われます。あれは篠原先生の本来の創作によるものなのか、それともエロ本化をひた走っていた少女コミック編集部の意向によるものなのか…。

 

ラムセス

「おれはあんたを『妻』にしたい。おれの気持ちを形にすればそういうことだと思ってもらおう」天は赤い河のほとり20巻より
 カイルの最強のライバル、ラムセス。カイルとはユーリをめぐるライバルでもあり、エジプトの軍事的な指導者として国をめぐるライバルでもあります。カイルが皇帝であり、正統派王子様キャラならラムセスは下克上を目指す野心家の将軍。ラムセスは基本的には結構ドライなところがある感じのキャラです。初対面で瀕死のユーリを見捨てますし、カイルの弟皇子も殺しますし、自分が認めた相手以外はどうでもいいといった風。娼婦に出会えば「二人まとめて相手してやる」と少女漫画のライバルにあるまじき、3P上等発言です。そんな彼はユーリとカイルにはなんだかんだと甘い&真面目。この、本命だけには違う、ってのが非常にセクシーなんですよね。

 

 ラムセスはカイルのように甘く愛をささやくことはありません。ユーリに対するアプローチは常に「政治的に必要だ」という意味合いがメイン。ユーリ自身については「あんた自身のことは気に入ってる」レベルです。でも彼は行動に気持ちを語れる男なんですよ。18巻のユーリが馬車から飛び降りるシーンでは、身を挺してユーリを守ります。戦いのさなか、全軍を指揮する立場でありながら、女性一人のために身を投げ出します。この瞬間、なんの計算もなく思わず体が動いたという描写が素晴らしい。特に20巻から始まるエジプト編でのかっこよさは群を抜いています。自分の不利になるにも関わらず、王太后を敵に回してユーリを守り助けつづけ、他の男を愛している女性を振り向かせるために一見そうは見えないけれど、ひたむきな愛を捧げる姿。これがロマンチックだと思わされます。

 

 おそらくラムセスはユーリの心が自分のものであったら、カイルみたいに甘い言葉もたくさん言ってくれると思うんですよね。でも、ユーリがカイルを愛しているのを知っているから言えないんだろうなと思います。冒頭のセリフはストレートに愛しているといえないラムセルの最大級の愛の言葉です。エジプト編では最後にユーリはラムセスの元から去っていきます。「死なせるために連れてきたわけじゃない」と別れ際、思いを断ち切るラムセスは切ないです。クライマックスの戦い後、物語からの退場シーンもめちゃくちゃ爽やかです。でもラムセスびいきの私としてはユーリとラブラブしているラムセスも観てみたかった…。

 

ザナンザ皇子

「王妃を愛して幸福にするよ。そしてわたし自身、王妃と民から愛されて幸福になれるよう努力する」天は赤い河のほとり7巻より

 私が一番好きなのはザナンザ皇子です。カイル皇子を差し置いて実は彼こそNo,1プリンスキャラではないでしょうか。カイルはどちらかというとキングキャラですかね。ザナンザ王子は強く賢く美しく、しかし生母の身分が低いため皇統をつぐ立場にはありません。その分、ちょっとカイルより甘えた感じがあります。そこがかわいい。ユーリに対する想いは美しい兄嫁に対する憧れという部分もあるのかな。ユーリを愛しながらもなによりも大切な兄のため、その思いを封印し、自らの使命に結果として殉じていく姿は本当にけなげとしかいいようがない。そして、その婚礼へ向かう旅の中でユーリに言うのが冒頭のセリフです。平和なオリエントを作るため、けれど決して政略のためだけでなく自分も含めたみんなを幸せにすること道を選ぶザナンザ王子。この素直さ・明るさは皇子という貴い身分と母と兄に愛されて育ったからこそもてる気質なのかなと思います。

 

 ラムセスと甲乙つけがたいのですが、私はけなげさに弱いので、押しキャラNo,1はザナンザ王子に軍配があがります。2018年に番外編が公開されましたが、その主役もザナンザ王子でしたね。砂漠へ消えていった皇子の愛。あのタブレットはどこへ消えていったのか。宝塚では桜木みなとさんが演じられていましたが、あの儚げな美しさはザナンザ王子にぴったりだと思いました。

 

ルサファ

「ユーリさま、あなたはやはりわかっていらっしゃらない。あれだけでわたしはどんな業火の中でも荒れくるう大海でも喜んで渡ってゆける…!!」天は赤い河のほとり20巻より

 近衛隊副隊長ルサファ。彼は影に陽にユーリに付き従うナイトですね。皇帝やヒッタイトに対する忠誠もさることながら、ユーリに対する忠誠がなによりも強い人。彼にとってはユーリは想い人であると同時に永遠の憧れであり女神です。ルサファはラムセスの妹ネフェルトに想いを寄せられ、ちょっとずつ心を開いていくかに見えます。ルサファのちょっとした一言に一喜一憂するネフェルトがかわいい。少女コミックの扉絵でもルサファとネフェルトが家庭を築いている絵があったりして、私はネフェルトがすごく好きなのでお似合いじゃん!と思ったもので、その恋の結末は悲しかったです。

 

番外:ハディ

「わたしたちをお疑いなら死ねとお命じください。この場で胸を刺しつらぬいてごらんにいれます」天は赤い河のほとり10巻より

 男性ではないんですが、ユーリの側近のハディ。ユーリに対して誰よりも厚い忠誠心を持っています。妹を守る姉のように、どんなときでもユーリの側にいて助けてくれる人。皇帝暗殺事件の際、カイルに忠誠心を問われたときの返答は見事でした。また、ユーリがカイルに強引に迫られたときも、自らを顧みず助けに入ってくれます。家族を失ったユーリに肉親のような愛情をくれたのはこのハディだなと思います。

 

✔  重要シーンを彩る印象的な背景

 これ、けっこう大事なファクターだなと思っています。ここぞというシーンでは、アナトリア大自然の中やハットゥサの美しい建造物などの壮大な背景が描かれています。これらが重要なシーンをさらに盛り上げ、古代の神秘的な雰囲気や物語の深みを作り上げていると思います。

 

 私の好きなシーンとしては4巻でユーリがキッズワトナ急襲を知らせるため、アナトリアの満点の星空の下、馬をかけるシーンです。3巻でティトを天に送る夜明けのシーンも美しいですね。そして、ラストシーンの乾いた風が行くハットゥサの遺跡のシーンも好きです。歴史の悠久さを感じます。ちなみに、私が実際にいったハットゥサの遺跡の写真です。

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 一番思い入れが深いのはやはり11巻皇帝暗殺犯処刑のシーンかな。日没の空の下、無実の罪で死んでいくウルスラ。カッシュと二人逃げることもできる中、ヒッタイトのために、ユーリのためにウルスラは死を選びます。また、なによりもウルスラを大事に思いながらウルスラを尊重するがゆえに、ただその場を見守ることしかできないカッシュ。その残酷な場面を美しい夕日が彩ります。そして、まったく違う場所にいるユーリも同じ夕日を見上げている。初めて読んだ10歳の日、このシーンで号泣しました。

 

ロマンティックという言葉の意味はgoo国語辞書によると「現実を離れ、情緒的で甘美なさま。」とあります。たぐいまれな能力を持つ男性たちからひたむきな愛を捧げられる主人公。彼女もまた「砂漠の中の砂金粒」と評される能力者。美しい歴史と背景の中、彼らの紡ぐ物語はロマンチックの極致だなあと思う次第です。

 

天は赤い河のほとり(1) (フラワーコミックス)

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