引き続き、2019年10月31日から11月3日に行われたマンガバルセロナ(MANGA BARCELONA)のレポートです。
今回は11月3日に行われた菅野文先生のライブドローイングについてです。会場は前日11月2日のファンミーティングと同じ大型会議室。前方の壇上にデスクとスクリーンがあり、先生が原画を製作する様子をファンが固唾を飲んでみつめるというイベントです。登壇者は前日と同じく菅野文先生、担当さん、通訳さんです。ライブドローイングは他の作家さんの講演もありましたが、マンガのコマ割の作り方を解説される先生や、下絵まで完成した原稿にペン入れをする様子を見せてくれる先生など、先生によって内容は様々。菅野先生はリチャードのラフが入った原稿用紙に下絵とペン入れ、仕上げをする様子を見せてくださいました。
本日マンガバルセロナ最終日でした。今日は朝から菅野先生によるライブドローイングが開催! リチャードが完成していく様に、みなさん魅入っているようでした。最後は、なんと完成した生原画とサイン入りのイラスト集をプレゼントするジャンケン大会が開かれました🌹✨ pic.twitter.com/H9rEkR8H2x
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ライブドローイングの様子
先生がリチャードのラフを記載済みの原稿用紙を持って登壇。シャープペンで下絵を入れていきます。ラフは日本で準備されたとのことでした。同時並行で通訳さんから会場のファンへ、スペイン語で菅野先生の紹介が入ります。スペイン語だったので内容は分からなかったのですが、オトメンやドラマ、新選組といった単語が入っており、『薔薇王の葬列』以外にも詳しい説明がされていたように思われました。通訳さん、元々菅野先生のファンなんだろうなという感じがなんとなくする。作業ごとに先生から説明が入ります。以下、様子を箇条書きです。
・原稿用紙は普段はB4のものを使用。(会場で使用していたのはA3)A3サイズを使用している作家さんも多いとのこと。
・下絵を入れながら、立ったり座ったりしながら原稿を見ている先生。遠くから見ないとバランスがおかしくなるため、普段は床に落として見ているとのこと。
・作業道具を画面に映して紹介。ペンは丸ペンとタチカワのペン軸。
・通訳さん:(日本語で)かっこいいですね!リチャードはかっこいい!(やっぱりもともと『薔薇王の葬列』が好きな人ですよね!)
・ペン入れ・ベタは全て丸ペンで作画・会場にペンの音が響く
・ペン入れはリチャードの顔から、原稿をくるくる回しながら。おそらく、インクが手につかないよう、中心から描いているのかな?
・ペン入れ中は作業をされながらQ&Aをされる先生。すごい。話しながら作画できるのは寝ないために培った技でしょうか…
Q&A内容
※質問は基本的にスペイン語、先生の回答は日本語でした。スペイン語部分はわからなかったため、以下は先生の回答から推測される質問内容を()書きで書いています。また、先生ではなく通訳さんから回答してスペイン語で質疑が完結した個所は割愛しています。
質 問 :(リチャードは男性的にみえるときと女性的にみえるときがあります。その違いはどこで生まれているのですか?)
菅野先生:例えばまつげをちょっと多めに描くと女性っぽく見える。また、眉毛と目が近いと男性っぽくなる。そういう微調整をやっています。
質 問 :(こうやって講演会で絵を描くことはよくあるのですか?)
菅野先生:ペン入れは人前でやったことがまだないです。日本でもやったことがないので結構緊張しています。
質 問 :(普段はアシスタントさんと作業しているんですか?)
菅野先生:今は背景などをやってくれるアシスタントさんが二人いて、仕上げというトーンを貼ったりする作業を手伝ってくれるアシスタントさんが二人います。仕上げはデジタルです。その人はちょっと遠くに住んでいるのでパソコン上だけのやりとりです。
質 問 :(どういう質問だったのかちょっと推測できませんでした。たぶんネイルについての質問?)
菅野先生:濃い色のネイルだとひっかいて(原稿に)色がついちゃうことがあるんです。
質 問 :(どういう作画が大変ですか?)
菅野先生:ベルトがいっぱいある服がすごく大変です。
質 問 :(原稿は雑誌掲載後どうしているのですか?)
菅野先生:たまに原画展という原画を展示するイベントがあるのでとっておいていますが、作家さんによってはあげてしまう人もいますし、私もどうしようかなと… 永遠に増え続けるので… 家に保管してますけど、(今後は)どうするんでしょうね。
質 問 :(**系で影響を受けている作品はありますか?(**系というのは想像がつきませんでした))
菅野先生:特には影響は受けていませんが、その系統で好きな作品はあります。ベルセルクとか。
質 問 :(リチャードが黒髪なのはわざとですか?)
菅野先生:わざとやりました。黒い髪は意味がある人にしか使わないようにしています。
質 問 :(イギリスに取材は行かれましたか?どんなところに行きましたか?)
菅野先生:戦場の跡やシェイクスピアやリチャードに関係するところに行きました。何回か行ったので、ロンドン塔も何回か行きました。
通訳さん:**は?(**部分、聞き取れませんでした…)
菅野先生:そこは行きたかったんですけど、一緒に行ってくれている人が退屈しちゃうかなと、付き合わせるのが悪いなと思って観られなかったです。
☆☆菅野先生、原稿にバッテンをいれながら
菅野先生:ベタを塗ってほしいところにこうやってバッテンマークをつけます。(アシスタントさんへの)指定の仕方として。自分であとで塗る時もありますけど、とりあえずつけます。今は自分しかいないので、自分で塗ります。
質 問 :(丸ペンがお気に入りなんですか?)
菅野先生:この付けペンはなぜか日本の漫画家はみんな使っています。すごく大変なので私はやめたいのですが、この線はこれでしか出ないので(やめられない)。今、仕上げは全部デジタルでやっているんですけど、ペン入れまではこれでやらないと。デジタルでやると、この線は出ないんですよね。丸ペンは細い線が出るペンで、繊細なので描きやすいペンではないです。すごくひっかかる。でもそれがいい効果を生み出すと思います。
☆☆菅野先生、消しゴムをかけて、さらに線を追加
菅野先生:描き終わって、消しゴムをかけた後に一回様子を見て描き足すという作業をします。
少しして原稿が完成。会場から拍手!!
完成原稿はじゃんけん大会で優勝した方にプレゼントされました。さらに、サイン入り画集も別の1名にプレゼント。最後に会場から大きな拍手が贈られイベントは終了しました。完成原稿、私もめちゃくちゃほしかったですが、スペインの人達のために先生がわざわざ来てくれているイベントなので、じゃんけん大会は参加を遠慮しました。が、イベント終了後に原画をもらった方にお願いして写真を撮らせてもらいました。
原稿が製作されていく様子を目の当たりにして、『薔薇王の葬列』は菅野先生の頭と手の中から生まれている作品なのだなと改めて実感しました。線はほぼ丸ペンでいれているというのにはびっくり。首の影や衣服の陰のグラデーションも全て手作業です。美しい… リチャードの髪のべたも丸ペンで入れていらっしゃいました。スケジュール通りきっかり1時間で終了し、そうした意味でもプロの作家さんのすごさを感じました。
次回は、スペイン語版『薔薇王の葬列』の翻訳者アナ・カロさんによる『薔薇王の葬列』考察トークショーについてレポートを書こうと思います。