It's a rumor in St. Petersburg

アラサー学生です。主にまんがの感想を書こうと思っています。

【その他】『美女と野獣』よりBelle~いとおしい田舎のオタク・ベル

 

 私はけっこうカラオケが好きなのですが、カラオケで必ず入れる歌があります。映画『美女と野獣』の『Belle』という歌です。主人公・ベル登場時の歌ですね。子供の頃、初めて『美女と野獣』を観たときは、単に村人がベルって「美人だけど変わってるよね」って歌ってるだけの歌だと思っていたのですが、大人になって初めて英語版の歌詞を読んで全く違う印象を受けました。この歌って田舎のオタクの孤立と孤独を歌った歌だと思うのですよ。

 

Belleの歌詞
Belle (Beauty And The Beast) / Disney の歌詞 (348787) - プチリリ

Belleの歌詞の日本語訳
【和訳】Belle: Emma Watson (by Beauty and the Beast) | 東の果てから、やいかまぬ。~Jeg kommer nu~

 

 

 

 

  まず歌いだしのfull of little peopleで「!?」と思うじゃないですか。次にpoor, provincial town で「!!?」となるじゃないですか。provincial って。

 

provincial【形】
①州の、地方の、県の
②〈軽蔑的〉田舎くさい、田舎者の、あか抜けない
③〔人や考えが〕偏狭な、偏屈な
英辞郎 on the webより

 

この曲で、provincialという単語は3回もでてきます。つまり『花より男子』の三条桜子ばりに「田舎、田舎、ド田舎!!!」とベルはのたまっている。さらにpoorまでついています。ディズニーヒロインって「この小さくて美しい村、この静かな朝が私大好きなの!」とか歌うんじゃないんですか?なんかこの歌、村に対する嫌悪で満ちてますけど。

 一方、村人側もベルが本の話をふると、sounds boring と返すなど、けっこうひどいです。興味なくても、もうちょっと言いようがありませんか。この村人、ベルのこと嫌いなのでは?とすら思いました。特にエマ・ワトソン主演の実写版では嫌がらせを受けている描写もあり、いじめられ気味ですらあります。

 

 

 

 歌全体を通して、ともかく村人たちはベルは変わってる、変と言いまくり、ベルはベルで本ばかり読んで空想の世界から戻ってきたくないと言います。

知ってる… こういうの知ってる…

田舎のオタクだ、これ。わけのわからん漫画や本を読みふけり、同級生や家族・親族から遠巻きにされるアレです。時々、なに読んでんの?と聞かれて「シェイクスピア」とかドヤ顔で答えて、冷たい目で「へー、つまんなそう」とか言われちゃうアレだ。本人は本人で、これだから田舎は嫌だ、周りはみんなバカばっかり、とか思うアレだ。

  そして間奏後、ガストン登場。見た目が良くて腕っぷしの強い村の人気者。粗暴で取り巻きを従えています。beautiful as me とか歌ってて、知性ゼロ。言うなれば、田舎の高校のボスざるヤンキー男。あー、これは陰キャのオタク・ベルが最も嫌いそうなタイプですね。さらにガストンガールズ。ベルからすれば、暴力と顔だけが自慢のバカ男にキャーキャー言ってる様子は軽蔑の対象ですらあるでしょう。なにがbruteだ、バカ、バカ、バカ、みーんなバカ!とベルの声が聞こえてきそうです。

なんだっけ、これ…

あれだ、『のだめカンタービレ』の登場時の千秋様だ。そうだ、ベルは千秋様なのだ。周囲のレベルの低さに辟易とし、田舎に対するヘイトに満ち満ちているのです。

 そして、曲のラスト、ここではないどこかを求めるオタク、美人だから妻にするという頭空っぽのヤンキー、ベルってほんと変と言いまくる村の人々の声がまじりあって歌は終わります。

 

 

 

映画の後半、ベルは野獣と仲を深めていきますが、当然ですね。一緒にシェイクスピアについて語り合える相手で、さらにプレゼントは図書館。頭空っぽのヤンキーとオタク趣味を理解してくれる人外だったら、まあ人外ですよね。『美女と野獣』については他にもいろいろ気になることがあるのですが、(なんで、『ブスと野獣』じゃないんだ?とか、たぶん時代設定フランス革命後だと思うんだけど、今更王子がよみがえってどうなるんだ?とか)大人になってからこのベルという人物がすごく好きになりました。 ベルは割とラブロマンスや運命的な出会いがお気に入りみたいなので、現代日本にいたら乙女ゲーとか好きなタイプじゃないでしょうか?ツイッター大好きで二次創作とか作っちゃう子だと思うのですよね。It's my favorite partと好きなシーンについて歌う場面などもはや萌え語りに思えます。そう思うと、私はこのprovencial town で鬱屈しているベルがいとおしくてたまらないのです。