It's a rumor in St. Petersburg

アラサー学生です。主にまんがの感想を書こうと思っています。

【考察のような感想のような】『7SEEDS』④夏至の章(12巻~16巻)について

7SEEDS夏至の章について考察を書きます。

夏至の章について

夏至の章は12巻から16巻まで展開され、全23話という非常に長い章です。
この章の前半は夏のBについて、後半は春秋冬と夏Aの混合チー厶について描かれています。
アニメのシーズン1はこの章の途中(16巻)まで描かれています。
この章では、小瑠璃とハルのロマンスがロマンチックで好きです。
新巻さんが能ある鷹が隠していた爪をむく瞬間もかっこいいですね。

 

 

 

章のタイトル『夏至

二十四節気の第10番目で、北半球で最も昼が長くなる時期です。
カレンダーで言えば6月頃に該当し、生物の動きが活発になり、成長していく時期です。

 

この章では生きている全ての種たちが登場します。
未来の世界で新しいグループや役割が生まれ始め、摩擦をおこしながら種たちが新しい営みを生み出していく様子が描かれています。
サブタイトルには各話の内容に関連した日本語の動詞がつけられています。

学校教育に対するアンチテーゼ

田村先生は関心の強いテーマについて様々な形で何度も描かれる作家さんだと思います。
7SEEDS』や『ミステリと言う勿れ』、『BASARA』の中には共通したテーマがいくつも見られます。
学校教育に対する疑問というのもその一つです。
社会から隔絶された学校という場所の中で、独自のルールがまかり通る。
そういう構造で教育された子供たちが持ってしまう歪み。
この章では田村先生が持つそうした学校教育に対する疑問が夏A、特に安居と涼の在り方に対して描き出されているように思います。

 

夏Aは生きていく技術という面では、英才教育を受けてきましたが、施設という社会から隔絶された場所でしか生活したことがありません。
そこには教師と生徒しかおらず、生徒はみな同じ年。偏りすぎだろ!
教師と生徒の間にはテストする側とされる側という絶対的な力関係の差があり、教師たちの横暴は教育の名のもとに正当化されています。
生死に関わるような事でも、生徒側は受け入れるしかありません。

 

田村先生はこの作品における施設という場所に、現代日本の学校を重ねて描いているように思われました。
一般的な社会では犯罪ともなり得るようなことでも、学校という文脈の中では曖昧に揉み消されていく。
そして学校教育の中でエリートだった者がもつ特有の歪み。

 

朔也の裁判という提案に涼がぽかんとした表情を見せていたのが印象的でした。
彼らは施設でルールを破ったり、求めに応えられなければ教師たちから罰(時に死ぬこともある)を一方的に与えられていました。
そして、涼は支配する側になれば、他人の生死をも自分たちが勝手に決めていいと思っている。
安居も涼も施設や教師たちのやり方が嫌いでたまらなかったはずなのに、それが刷り込まれてしまっている。
なりたくなかったものに知らないうちに自己が染められていき、それによって自らが苦しむ。
安居と涼の姿はみていてつらいです。

 

社会から隔絶された世界で作り上げられた学校エリートとしての夏A、また、その中でも抜群のエリートだったからこそ、新しい環境に順応できず浮き上がっていく安居と涼の姿が夏至の章では描かれているのだと思います。

 

 

 

ちょっと思ったこと

  • 角又とひばりの出会い:ひばりが口にする、杜甫李白の話は蛍に対するひばりのコンプレックスを表しているのだと思います。この後の角又の一言が、ひばりが角又に心を許すきっかけなのかな。「江は碧にして…」は最終回への布石ですね。
  • 安居と涼ばかり責められているけど、夏Aって全員犯罪行為をしてますよね。そこのところどうなの?と思います。卯浪殺害やのび太の人体実験もそうですが、花のロープを切った時、虹子も花を見殺しにしてますよね。そこについて最後まで誰も追求しないけど、個人的には疑問に感じます。
  • 虹子が花を見殺しにするのは、他人に関わらず、トラブルに巻き込まれないというのが彼女のスタンスであり、テストをパスできた理由だからだと思います。その点で安居が十六夜さんを撃ったのと同種の問題だと思います。実際に安居は人を殺してしまい、虹子の場合は花がたまたま助かったという重大な結果の違いはありますが。安居が十六夜さんを撃った理由については別エントリで考察してみました。

  • 安居が花を襲ったのは、涼から女側がつらいという情報を得ていたからといのも一因だと思います。痛めつける方法の一因として考えていたのかも。
  • 小瑠璃とハルのシーンはロマンチックですごく素敵です。空飛ぶシーンと月明りの下でよりそうシーンが好き。 

 

アニメのシーズン1のラストシーンの続きは16巻からです。
アニメは櫻井孝宏さんの涼がセクシーでいいですね…
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