It's a rumor in St. Petersburg

アラサー学生です。主にまんがの感想を書こうと思っています。

【感想】『アナスタシア』脚本を読みながら思うことつらつら

梅芸版アナスタシア、2023年の再演が千秋楽を迎えました~。いや~本当によかった!なんかいろいろ感想があるんだけど、感想のような思ったことのような気づいたことのような内容をブロードウェイ版の脚本を読みながらつらつら書いていこうと思います。※ハリウッド映画、アニメ、ブロードウェイ、宝塚、梅芸、史実などかなり広範囲のネタバレありです。

 

読んでいる脚本はこちら

Anastasia: The New Broadway Musical (LIBRETTO) | PDF | House Of Holstein Gottorp Romanov | Nicholas Ii Of Russia


日本語版の脚本も読みたいよ~。訳詞も読みたい!

 

 

 

 

ACT ONE PROLOGUE
プロローグは1906年。史実だとアナスタシアは1901年生まれなので、この時5歳かな?舞台版もそんな感じ。アニメ版は1916年と語りが入って、ロマノフ王朝300年を祝う舞踏会から物語がスタートしているので、史実を踏まえつつ、年齢や出来事の年代は少しふわっとさせてる感じかな。

舞台版もアニメ版もリトルアナスタシアと皇太后のシーンから始まるのだが、舞台版の脚本を読むと場所、YUGUSOV PALACEと書いてある。ここ、後にディミトリたちがねぐらとするユスポフ宮殿なんだ!ユスポフ伯爵とロマノフ家は縁戚関係にあるとはいえ、一貴族の館なのでは?と思うのでアナスタシアがここにいるのがちょっと疑問なんだけど、(そういうもの?お泊まりに来ただけ?)この設定があると、後にアーニャがユスポフ宮殿でこの場所知ってる!ってなるのがしっくりくる。ちなみに実際のユスポフ宮殿は個人の舘にシアターがあるというすごい建物である。19世紀にもなってこんなものを造ってるから革命が起きるのではと思わせる絢爛さである。

世界遺産 ユスポフ宮殿(のシアター)

壁には天使の絵(Painted wings)

皇后登場、お祈りについてFor your father, the Tsar, you sisters and brother, for Russia herselfと色々な名前をあげているけど、皇太后の名前は入ってない。挑戦的。対するお祖母様、So the child will rememberと言っており、日本語訳は「この子が私を忘れないように」である。梅芸版で皇太后を演じた麻実れい様もこの「私」をめちゃくちゃ強調してお話になっていた。副音声に「あなたが私を無視するので」みたいな一文が入ってそうである。お祖母様、後半の愛するものを失った~みたいなくだりでも皇后に触れない。アニメ版ではオルゴールは皇帝と皇后を模しているとか、アーニャは皇后に似ているとか皇后に言及するシーンがあるんだけど、史実で実際に2人は不仲だったそうだ。舞台はより史実準拠のようである。

ここでのお別れ後、二人は離れ離れになるわけだが、ここから1917年の革命、その後の1927年ごろの再会までけっこう年月が経つので、その間も一度も会わなかったのね〜。

そして1917年。アナスタシア、16歳。ロシア革命が起こって皇帝一家は散り散りに逃げていくが、アナスタシアはオルゴールを取りに来た道を引き返し、家族とも離れ離れに。そして、銃声。舞台から彼女は消え、皇太后に一家の悲報がもたらされる。ここかなりアニメ版と変わるなと思った。アニメ版では、幼き日のディミトリが召使い用の秘密の通路からアナスタシアと皇太后を逃がすんだけど、その後の逃亡中に二人は離れ離れになってしまう。その流れでオルゴールはディミトリの手に、オルゴールの鍵はペンダントとしてアナスタシアの手に残る。このエピソードと物証が後に、彼女こそアナスタシアと観客含めみんなが納得するポイントだと思うんだけど、ミュージカル版では意図的に弱められているかんじ。それはつまり、↓で書いたようなことなのかと思うんだけど…でも、どっちも好きです。

 

www.anastasia1997.tokyo

 

SCENE ONE
グレブの演説からスタート。その中で彼はThat is the promise we have made. Fellow Russian to fellow Russian、日本語版ではロシア人からロシア人への約束だ!と言っている。ソヴィエトは宗教を否定してるから神に誓うんじゃなくて、同志から同志へということなのかな。ロマノフ家のみんなや後に出てくる逃亡者たちが神に祈るのと対象的。聖ペテロの街、サンクトペテルブルクレーニンにちなんだレニングラードに名前を変えている。そこに、名前を変えたって中身はかわらん、ここはサンクトペテルブルク!とぶっこんでくるのがディミトリなので、この対比もおもしろい。

そして私の大好きなルーモア!日本語タイトルは「ネフスキー大通り」 サンクトペテルブルクの目抜き通りだね。

英語版の詞はかなりアニメに近い感じ。でもミュージカル版のオリジナル設定を説明するためにそのあたりは変えてある。政権批判めいた内容もアップグレードしていて、やっぱりちょっと大人向けに練り直されている感じがする。♪みんな微笑むスパイでさえ♪、♪好きな色は赤、当たり前さ♪、♪毎日並ぶパンの列に♪などアニメ版より具体的に批判が込められている。あ、そういえばこの曲は物語を通じて唯一ぐらいロシア語入ってる!СПАСИБО ЗА СЛУХИ!噂をありがとう、という意味のよう。日本語版は英語版でアニメから変えてないところも結構変えているな~とも思った。例えば、♪IT’S THE RUMOR THE LEGENDTHE MYSTERY♪とかは英語版ではアニメ版と変わっていないんだけどアニメ版の日本語訳詞は♪噂、秘密、そうミステリー♪だったところが♪噂はまるでミステリー♪となっていたり。この辺は噂というものの位置づけがアニメ版と変わっていたりこの後のストーリーも変わっているので、日本語で再構築するなかで変えているのかなと思った。

ディミトリ、ヴラド、アーニャ、グレブがここで初登場。これでプリンシパルが全員登場ですね。主演のアーニャが一番最後。アーニャがトラックのバックファイアに怯えるのは伏線ですよね。背景は王宮ですね。ミントグリーンがかわいい。

世界遺産 エルミタージュ美術館

LEDパネルで実写がかなりつかわれているのと、出てくる場所がかなり有名な場所が多いので観光名所を巡っているような気持ちにちょっとなる。

闇市のシーン、出てくるのは絵画、パジャマ、オルゴール。パジャマは英語版は♪COUNT YUSUPOV’S PAJAMAS COMRADE BUY THE PAIR♪とあり、アニメ版から変わらずユスポフ伯爵のパジャマである。宮殿といいユスポフ伯爵に謎のこだわりが感じられる。日本語版の♪噂を聞いた、噂を聞いた、間違いないと言われた♪というフレーズ、曲のラストに向けてボルテージがあがっていくのがすごい好き。噂とおとぎ話。これがこの物語のキーワードなんだよね。ラスト、♪THE PRINCESS ANASTASIA ALIVE OR DEAD WHO KNOWS♪ 、これは英語版はアニメ通り。脚本を読んでいて初めて気づいたんだけど、のちのちゴリンスキーさんとグレブがこのメロディーで会話している場面の歌詞、ここの詞を踏まえてのものですね。

 

 

 

SCENE TWO
再び舞台はユスポフ宮殿へ。皇太后からアナスタシア手渡されたあのオルゴールがディミトリの手にわたって再びユスポフ宮殿に戻ってきたと思うとここですでに二人のかかわりは始まっていたわけで…ロマンを感じる。(パレードで出会ってるんだけどさ…)

オーディション会場にアーニャが登場。アーニャが働いてきたというペルミはロマノフ家が処刑されたとされるエカテリンブルクのすぐそばなんだね。ペテルブルクはヨーロッパよりなので、パリの方へと歩いてきたのかな。ど根性キャラ。

結構不思議なのが、アーニャってアニメ版と違ってエカテリンブルクで家族と一緒に処刑されかかってるんだよね。だから大きな音や銃声が怖くて、In my dreamでもフラッシュバックがあることを語ってる。アニメ版はオルゴールをとりに戻って家族と別れ別れになったから助かったってことなんだと思うんだけど、舞台版はエカテリンブルクでおそらく誰かが意図的に助けてくれたんだよね。これってなぜ誰がどうやったんだろうって思ったり。他の家族はみんな亡くなってるのでね… ヴラド流にいうと、ボリシェヴィキに銃を突きつけられたけど、誰も引き金を引けなかったのさ、ってことなのかな…

 

SCENE TRHEE
ボリシェヴィキオフィスでグレブが噂の聞き取り調査。アンサンブルの工藤彩さんのインスタライブでお聞きしたのだけど、この時グレブはガールズの指の骨を追っているらしい。かなりバイオレンスである。オーディションには落ちるわ、骨は折られるわでかわいそうなマルファさん(骨を折られたた娼婦の方)…ここら辺をふまえると、どんだけアーニャに特別待遇かよくわかるね…

 

SCENE FOUR
舞台は再びユスポフ宮殿へ。Learn to do itですね。♪癇癪起こして召使にキック♪と「私の親友は私が知ってるわ!」「なんだその癇癪!」やディミトリの「お辞儀したのはその時だけだ」など、伏線がバシバシ張られている歌。最後にアーニャがヴラドにフランス語で話しかけられてフランス語で返すシーンは「よくできたねマドモアゼル!」「ありがとう!」「君フランス語が話せるの?」「ちょっとね」みたいな感じかな。この時代の平民が外国語なんて話せるはずがないので、これはもう…って感じ。この辺り、英語はめちゃくちゃ韻を踏みまくった上でキーワードを散りばめており、音楽に合わせつつ、意味を拾いつつ、韻を踏みつつという、ともかく翻訳大変そ〜!!という感じである。

この期間、窓の外の景色がどんどん変わっていって季節がかなり動いている。出国許可証なかなか手に入らないんだなーって感じ。あとグレブ、噂の調査にかなり時間がかかってるのねって感じ。

 

SCENE FIVE
グレブのオフィスに呼び出されるアーニャ。♪流れるネヴァ川♪の曲があるシーンですね。ネヴァ川はサンクトペテルブルクを流れる川で、後半で出てくるネヴァクラブもこの母なる川から名前を採用していると思われます。このシーンを読んでると、アーニャとグレブのぎこちない握手が、ラストの力強い握手に変わっていくところとつながっている気がしてとてもよい。ラストの握手はお互いを認めあった上での本当の親愛の情のこもった握手、そして別れの握手ということなんだなと思える。あと、ここでアーニャがグレブのことをComrade、同志、と呼びかけたのをグレブがIt’s Gleb. Please.と言ってアーニャがグレブと呼びなおすシーンがある。(日本語の訳なんていってたのだろ…) ここからこの二人はお互いをアーニャ・グレブと呼ぶ関係なんだけど、物語のラストでグレブがアーニャに同志と呼びかけることがこの二人の関係性というか彼らの間にひかれた線を表していて、すごく好きだなと思った。

 

SCENE SIX
アーニャはグレブのところを去ってディミトリと合流。ごろつきにからまれ、そこからディミトリの生い立ちの話へ。書きながら気づいたのだけど、グレブのところに連行からMy Petersburg、Once upon a December、ユスポフ宮殿に乗り込まれたとヴラドがきて、その夜出国なので一日の話なんだな。グレブ、アーニャが去ったその足で乗り込んだのかな。半年以上寝かせた割に急にやる気をみせるグレブ。

ディミトリのお父さんはアナーキストとのこと。アーニャ・グレブ・ディミトリの父親はみんな亡くなって、みんな立場が異なるのね。

わりとそれぞれがそれぞれを害しあっているというか、ディミトリってロマノフ家とか帝政を憎んでてもおかしくないよね、などと思った。あと、わりとお父さんは知識層だったのかもねと思った。

そしてディミトリのペテルブルク案内。背景は血の上の救世主教会。アングルはネフスキー大通りからのものですね。あの教会を訪れた観光客のほぼ全員が撮影するだろうアングルだ…と思った(ちなみに私のブログのアイコンも…)

世界遺産 血の上の救世主教会

My Petersburg、私はめちゃくちゃ好きです。特に日本語版の♪縛るものはなにもない俺は俺のもの♪という部分がほんとーーーに好き。ディミトリみたいな自由かつ力強い無敵の青年(本当はいろんな制約の中、生きているとしても)が歌う♪俺は俺のもの♪最高すぎんか。輝きすぎている。自分の生い立ちを語ってアーニャとの距離が縮まるところや、アーニャがディミトリにひかれていく感じがよくわかるのもいい。

からの、Once Upon a December、アナスタシアと言えばこのシーンだよね~~!!アニメ版のあの美しく哀しく幻想的なシーンを舞台で表現する・できるというすごさ。すごすぎる。ブロードウェイ版はディミトリはあの幻想はみえていないという設定だそうなんだけど、宝塚版はディミトリが幻想の中にわけいって♪彼女の夢に入り込んだような♪と歌っていて、それもかなりいいなと思った。ちょっと超常的な感じで、その幻想を一瞬共有して彼女のバックグラウンドに思いを巡らすというシーン、好きだな~。

ところで、ふと思ったんだけど、年齢ってこの二人、この時点でアーニャ27歳ぐらい、ディミトリ29歳ぐらい。(ルーモアの時点で1927年でそこから時間が経っているので)梅芸版はアーニャが葵わかなさん&木下晴香さんで二人とも20代前半だったので、アーニャもディミトリももうちょっと若い感じがする。一方、宝塚版はディミトリ役の真風涼帆さんが非常に迫力があるのでディミトリが20代後半から30代前半ぐらいという感じがする。
ディミトリ、ほんとうに役者さんによって雰囲気変わるなーと今回の宝塚版&トリプルキャストで感じました。下記は私の個人的な印象です。

  • 海宝直人さん 俺は俺のもの、何にも縛られない無敵の青年
  • 相葉裕樹さん 立ち居振る舞いの美しさ、気品がある。やっているのは多分結婚詐欺。
  • 内海啓貴さん 突っ張っているけど、ふとした時にみせる無邪気な笑顔。アングラな世界で生きていているのに時折りのぞく少年感がいい。
  • 真風涼帆さん 稀代の伊達男。アッシュ・リンクスぐらい凄みがある。たぶん命のやり取りを日常的にしている。

 

 

なんか長くなってきたのでシーンの途中だけど続きます。

 

 

 

 

www.anastasia1997.tokyo

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