最近、トルコに住んでいるのですが、在住の身としてはトルコが舞台の漫画を読むとやはり心がわきたちます。トルコが登場する漫画って何があるかなと改めて考えてみると、意外にもけっこうあるんですよ!
トルコっていいとこなのよ~ってことを知ってもらいたいという気持ちもあり、観光にも役立つトルコが舞台の漫画をまとめてみました。
トルコがメイン舞台の漫画
夢の雫、黄金の鳥籠
トルコものの鉄板です。2019年に国立新美術館で行われたトルコの至宝展とコラボもしていました。
15世紀、オスマン帝国最盛期の皇帝スレイマン二世の時代が舞台の物語です。ヨーロッパではルネッサンスとかやってる頃の話ですね。主人公サーシャはウクライナの村娘ですが、村が襲撃され奴隷商人に売られてしまいます。紆余曲折あり、最終的にオスマン皇帝スレイマンの後宮に納められることに。このサーシャ、後にスレイマンの皇后となる人物で、奴隷から皇后へ登り詰めた女性としてトルコではめちゃめちゃ有名です。
基本的にはトプカプ宮殿のハレムが舞台なので、観光の副読本としても優秀です。観光の前にこの漫画を読んでおくと、トルコの歴史やオスマン帝国時代の習慣などの基本的な知識が得られるのでより観光を楽しめると思います。
漫画としてもめちゃくちゃ面白いです。超オススメです。
勇午Final
こちらは現代イスタンブールが舞台のお話です。
主人公は世界一の交渉成功率を誇る交渉人・別府勇午。民族主義者ドゥフにより、トルコで謎の共喰い事件が起こります。誰もその正体を知らないとされるドゥフと交渉を持つべく、勇午はトルコに乗り込みます。
非常に写実的な絵柄で、街並みや人の感じなど、イスタンブールの空気感を再現していてすごいなって思います。イスタンブールに行く予定がない場合は勇午を読んで脳内トリップがおすすめです。違うのは、現実のトルコ人はもっと平和な話をしているってとこだけです。
取り扱っているトルコ系ブルガリア人の話は私もトルコに来て初めて知りました。ロシアや東欧諸国と陸続きで接し、冷戦時代、西と東の境界であったトルコ。日本ではあまり取り上げられることのない側面が描かれており、テーマとしても非常に面白い作品です。
このお話は長いシリーズものの完結編なのですが、いきなり完結編から読んでもおもしろいです。ちなみに毎度勇午がご当地にちなんだ拷問をうけるのが定番となっているそうですが、トルコ、こうきたか…!という感じです。
将国のアルタイル
正確にはトルコ風の異世界のお話なのですが、実際のトルコの歴史や習慣に取材された部分が多くあります。
トルキエ将国とバルトライン帝国はかねてより対立していますが、帝国の大臣が暗殺されたことをきっかけに、2つの国は一触即発状態になります。開戦を望む将軍たちの中、最年少の将軍・マフムートは暗殺の裏に潜む事実に気付き、戦争を回避するため、一人事件の解決に向けて走り出します。
壮大な戦記物です。お話自体がめちゃめちゃ面白いです。銀英伝が好きな人は好きだと思う。あと旅番組が好きな人も好きだと思う。トルコだけではなく、ベネツィアをモデルとしたヴェネディック共和国をはじめとした周辺諸国との関わりが描かれており、文化や民族の異なる国が近い位置で接し、お互いの影響を受けながら関係を築いている感じがまさにトルコだなと思います。これを読んでからトルコを訪れると、「あ、これアルタイルで見たやつだ!」ってなります。
2017年アニメ化もされており、Amazonプライムで観ることができます。
マフ君(主人公マフムート)かっこよすぎです。
囚われの歌姫
主人公セルマはエルトゥールル帝国宰相の娘ですが、母を早くに亡くし、義母や異母妹に邪険にされ、よるべない生活を送っています。唯一の楽しみは男の子に変装して屋敷を抜け出し、珈琲館で亡き母のウードを弾くこと。しかし、ある日、セルマは珈琲館で男たちが宮廷の政治に関わる密談を聞いてしまい、そのまま攫われしまいます。
2020年2月より連載開始、まだ2話が配信されたばかりの新作です。これちらもオスマン帝国をモチーフにしたトルコ風異世界のお話ですが、ウード、珈琲館、海辺の帝国…とトルコのエッセンスをちりばめたお話です。
2020年2月に作者の望月桜先生が取材旅行にいらっしゃったばかりです。ちなみに下のツイートで訪れていらっしゃるのは上で紹介した『夢の雫、黄金の鳥籠』のメインヒーロー・イブラヒムの邸宅を改装してつくった美術館です。
この右側の寄木螺鈿…私の身長くらいあるんですけど…どういうことなの………いくらするの………(庶民の感想) pic.twitter.com/nFCOftzgSD
— 望月桜@恋シェア&囚われの歌姫 (@motimado) February 11, 2020
天は赤い河のほとり
トルコ舞台の漫画のレジェンド。ガイドブックでも大々的に取り上げられています。
主人公ユーリは15歳の普通の中学生。しかし、呪いの生贄として、時を超え古代オリエントのヒッタイト帝国に召喚されます。彼女を召還した皇后に殺されかけるも、帝国の第三皇子・カイルに保護され、彼の側室に納まることに。同時に帝国の後継者争いや周辺諸国との戦争に巻き込まれていきます。
少女漫画史に残る名作です。ヒッタイト帝国は、人類初の鉄器文化を築き、オリエントに覇を唱えた帝国です。(近年新説も出ていますが…)基本的にはラブストーリーなのですが、実はかなり史実に基づいたお話です。作中に出てくる疫病の蔓延やエジプトへの花婿行列なども実際にあった出来事だそう。
物語の舞台、ハットゥサことハットゥシャシュは世界遺産に認定されています。標高の高い地域にあり、城壁からの眺めは壮観。カッパドキアとセットで回るのがおすすめです。
部分的にトルコが登場する漫画
乙嫁語り
19世紀の中央アジアの文化や風俗を描いた作品です。現代でいうところのキルギスやウズベキスタン、タジキスタン等幅広い地域について描かれていますが、10巻からはトルコ編です。時代的にはオスマン帝国の時代です。王宮や貴族の生活が描かれた漫画は多くありますが、庶民の暮らしや街の様子が描かれた漫画は珍しいなと思います。物語的にもイギリスの研究者スミスとタラスの再会が描かれ、非常に盛り上がっておもしろいパートです。
怪盗アレキサンドライト
作者の秋乃茉莉先生は歴史や伝説を主題にした作品を多く描かれています。このお話は19世紀パリが舞台ですが、19話ではナポレオンの妻ジョゼフィーヌとオスマン皇帝の母后エーメがいとこ同士だったという説をモチーフに、オスマン帝国を舞台にした物語が描かれています。このお話はすごく切なくて、トルコ関係なくても好き…
ヒストリエ
紀元前4世紀の古代ギリシア世界を舞台に、マケドニア王国のアレクサンドロス大王に仕えた書記官・エウメネスの波乱の生涯を描いた物語です。主な舞台はギリシャだったり、マケドニアだったりするので、微妙にトルコから外れているのですが、ちょいちょいビザンティオン・今のイスタンブールが登場します。8巻ではビザンティオンで海戦など行われており、今も昔も変らぬイスタンブールの重要性を感じることができます。
トルコという国は日本から遠く、正直あまりどんな国かイメージがわかないという人も多いと思います。漫画やアニメからちょっとでも身近に感じてもらえたらいいなと思います。
トルコにいらっしゃる予定がある方は観光の副読本としてもオススメです。歴史や文化を知ってから訪れると、観光をさらに楽しめると思いますよ!