***考察に必要な範囲でネタバレあります***
2018年末〜2019年始は長めのお休みが取れた上に、電子書籍を読む用のタブレットを買ったので、いろんな漫画をずっと読んでいます。実家に単行本で置いてあった漫画も電子で買い直したりしています。10巻の続きが電子で連載されているのしりませんでした。
これを機会にずっと書きたかったアンダロ世界の考察というか、整理を書いてみようと思います。登場人物多いし、物語世界の時間も長いし、現実世界の連載期間も長いし、整理しないと私の理解力では物語を理解できなくなってしまうので…。
以前書いた前提知識と考察2以降も合わせてご参照ください。
1.基本情報
登場人物の年齢
最初に登場人物の年齢を整理です。
・基準は春の賛歌でレイチェルがロウランドを初めて訪問した1月時点。
・()は春の賛歌主人公であるレイチェルとの年齢差です。
・誕生日の関係等でプラスマイナス1歳前後の誤差がある可能性がありますが、ご容赦ください。
※フィオナ・アリスの年齢はハニロでローズが受け取った手紙が、6巻でアーサーが出そうとしていた手紙だったと仮定した場合の年齢
グレースの年齢
グレースの年齢は不明ですが、番外編でマリーにおばさんと連呼されたり、アーサーより年上と示唆しているシーンがあるので40代半ばってとこでしょうか?
モルゴース様の年齢
モルゴース様(以下、モル様)は12兄弟の7番目、アーサーが12番目です。毎年年子で兄弟が生まれたとして、最低5つは上かな?やはり40代半ば以上だと思われます。
マリーの年齢
衝撃なのがマリーで、冬の物語での初登場時、20代の可能性があります。春の賛歌でレイチェルが初めてロウランドを訪れたのは新年です。冬の物語はその前年の秋のお話なので。私より歳下なのかい。おかんって感じが強すぎて、こんなに若いとは思いませんでした。
レイチェルの年齢
レイチェルはアルバートより、マリーとの方が年が近いというのも衝撃でした。ウィリアム(以下、ウィル)とレイチェルは9歳差ですが、アーサーとマリーは11歳差です。2人が出会ったのはマリー17歳の時ですから、実は年の差は全然セーフなのでは…?まあ、この時代、男女の差も大きそうですが。
アリス誕生
アリス誕生は仮定の通りだったとして、10巻の時点から5年後ということになります。9巻のあれで妊娠して、授かり婚じゃないのか。
ただ、あくまで仮定なのでローズが連絡がとれなくなる10巻の時点が、ローズが音信不通になる直前(Honey Roseの10年前)という可能性もありますね。その場合、4年繰り上がりますから、アリス誕生1年前で9巻のあれで…というのはありえるのかも。
登場人物の血縁関係
ロウランドの兄妹たち、13人兄妹って当時としても大家族だと思われます。しかも、誰がどういう繋がりで兄弟なのか入り組みまくってます。簡単な相関図を作ってみました。
ビックダディか。フィオナとロウランドの繋がりって、基本的にはアーサーの片思いだけですね。血縁的にはめちゃくちゃ他人です。
グレグの血縁
面白いなと思うのが、兄弟の中で誰よりもアンナの立場を尊重し、庶子と交わらないことを決めているグレゴリー(以下、グレグ)は実は庶子どころかロウランドと血縁がないと言うことです。後述しますが、彼が思う家族に彼は含まれていないという残酷さです。ロウランドとの繋がりはアンナを介して。そういう意味では、本人が意図せざるとしても、実はアンナの立場を慮るということは彼にとって重要な意味を持つことではあります。また、リトル・ハモンドとは母親違いの兄弟です。この2人、どっちもそれぞれの父母に似ているのがすごい。DNAを感じるキャラデザですよね。
血の繋がらないライナスとフィオナ
ライナスとフィオナに至っては血縁的にはロウランドとは全く関係ありません。Honey Rose(以下、ハニロ)で、ライナスはウィルに「庶子の最年長として」、庶子達の面倒をみるよう命じられますが、実はライナスもフィオナも庶子ですらないです。皮肉だなあ…。
いりくむ血縁があぶり出すもの
この物語にはなぜこんなに複雑な血縁が必要なのでしょうか?つまり、このお話において、この複雑な血縁は何を意味しているか?ということです。結局のところ、それは「家族とはなにか」すなわち「人と人は何によって繋がるのか」ということがこのお話の一つのテーマだからなのかなと私は思っています。
アルバートにとって、使用人であってもローズは家族です。マリーも家族です。でも、実の母であるアンナは家族ではない。
ウィルにとってはアーサーもアンナも家族です。
アーサーにとって、アンナは家族でした。でも、マリーを奪おうとした時からそうではなくなった。一方で、グレースが残したライナスは自分の子であり、家族だと認識しています。
グレグにとっては、正式な結婚とその間に生まれた子供が家族であり、スタンリーは血縁があったとしてもロウランドの家族とは違うとの認識です。(そして、実は彼がそれに含まれないという皮肉さです)
つまり、家族の定義も範囲も登場人物ごとに違い、単純に血が繋がっているから家族とは呼べないことが浮かび上がります。ロウランドでは、血の繋がり方も、置かれている立場も、規範の意識も違う人々が集まり、摩擦がありながらも「なんとなく家族っぽもの」をベースに生活しています。それぞれが違うからこそ、摩擦があるからこそ、「家族の条件」が浮かび上がり、実はそれは血縁ではない、という結論が導かれるのです。
しかし、この物語では愛があれば血縁がなくても家族となれるのだ、という単純なことを描いているわけでもまたない感じます。血縁・家族・愛・倫理、そうしたものに縛られ、苦しみ、狂っていくロウランドの姿こそがこの物語の主題だと私としては受け取っています。この物語は、血縁や家族や愛や敬虔さといった一見して美しいものによって呪われた人々の物語なのではないでしょうか。
次回はロウランドで起こった様々な事件について書きます。
【Under the Rose 考察2へ続く】