※※感想を書くのに必要な範囲でネタバレがあります。
しばらくブログを留守にしていたら、年が変わって新年度を迎えつつあります。プライベートでいろいろあったわけなんですが、『薔薇王の葬列』70話、あまりの迫力に圧倒されてしまって、この思いの丈をぶつけたいって感じで戻ってきました。担当さんの呟きに偽りなしです。
「薔薇王」70話は思わず声に出したくなる熱いセリフやモノローグばかり…🌹 魂と魂のぶつかり合いに、キャラクターが生きているということを強く感じました。
— 薔薇王の葬列🌹アニメ化決定&15巻3/16発売🌹 (@baraou_info) March 5, 2021
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リチャードの人生の物語
リチャードとバッキンガムの涙の別れ、本当によかったです。特にバッキンガムが涙を流すのって作中初めてじゃないでしょうか。リチャードは必ず会いに行くと言っていますが、国王と亡命貴族が再会するのは現実的には無理なんだろうと思います。この別れは永遠の別れになるという事をお互いわかっていて、それでもリチャードは別れを選ぶという重みがありました。
今回、私が一番感動したところは、リチャードが自分の意志で国王であり続けることを選んだことです。これまでのリチャードの選択は、それこそ「諦念の果て」だったり、単に執着や恐怖から選んでいるようにみえたり、自発的な選択には見えませんでした。初めて自分で望み手に入れた王位についても、今は後悔しているようにも見えました。今回の決断は、リチャードが自分の人生とバッキンガムへの想いを天秤にかけて、自分の人生を選んだという風に私にはみえました。あれだけ愛しあってきたバッキンガムと別れても自分の道を選ぶという選択に、一人の人間の人生の重みみたいなものを感じます。そしてその決断ができたのはリチャードが自分の人生の重みを感じられるようになったから、肯定できたからだと思います。リチャードはバッキンガムと愛し愛されるなかで、自分の人生を愛することができるようになったのだなと思います。(マギ) 菅野先生は『薔薇王の葬列』はリチャードの人生を描いていると以前、語られていましたが、70話はまさにリチャードの人生の物語でした。悲しいだけの別れでなく、力強さも感じる別れでした。
バッキンガムの恋
一方で、バッキンガムにとってはリチャードとの関係は全てを捨ててもいい、一世一代の恋だったと思います。彼にとってリチャードは子供の頃からの夢だったんだろうと思います。彼は恋に狂ったというより、昔からずっと強い情熱を持っている人だったと思います。ただ、リチャードに他に愛する人がいたり、自分が相手にされていないことがわかっているから、無意識にストッパーをかけていたんだろうなと。(でもなんとかリチャードの気を引こうとしてる感じが読者の目にはあきらかで本当にかわいい) 以前、菅野先生がバッキンガムはリチャードに恋をしているけど、リチャードはバッキンガムに恋はしていないと語られていたような気がします。この気持ちのあり方の違いが二人の道がわかれていく理由だと思えました。バッキンガムが初めてリチャードに出会った10歳の時から約19年もの歳月の中で、彼がリチャードの側にいられたのはどのくらいの時間だったのだろうと思います。誓約の日から約半年、愛を確かめあってから3か月くらいでしょうか。でも本当の意味で側にいられたのはもしかすると本当に数日だったのかもしれないです。
バッキンガムはリチャードが渡した指輪をティレルにあっさり渡してしまいましたが、これはもう国外に逃亡するつもりはないという事かと思います。最後になすべきことってなんだろう。きっと最後までリチャードのために自分のできることをするんだろうと思います。どこまでもけなげな男、バッキンガム。私はけなげな男に弱いのだ。
その他思ったこと
- あいかわらず神出鬼没ティレル。浮世離れしていて、常識的なことなんてなにもわからないのかと思っていたら、冷静な状況読みをしていてびっくりです。
- バッキンガムを追いかけてリチャードが森へ行くシーンは6巻でヘンリー六世を追いかけて森(?)へ行くシーンのリフレインになっているのかなと思いました。今度は自分の意志で別れを選ぶことができてよかった、リチャード。
- リチャードは作中でどれくらい泣いているのかなと思って、読み返していたらけっこう泣いていました。嘘泣きまである。そうだ、この人、リチャード三世だった。
ともかく70話、本当に素晴らしすぎて、素晴らしいです。71話も楽しみにしています。
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