It's a rumor in St. Petersburg

アラサー学生です。主にまんがの感想を書こうと思っています。

【感想】『薔薇王の葬列』 菅野文(著) 13巻

※※感想を書くのに必要な範囲でネタバレがあります。

 

2019年2月、『薔薇王の葬列』13巻発売にコラボカフェ、白いのお渡し会にサイン会が開催されております。
超薔薇王月間!!
各イベントに参加された皆さんのレポートをにまにましながら毎日眺めています。
その傍ら13巻を読みながら、物語の意味を考えていました。
正直、13巻は解釈がかなり難しいなと思いつつ、自分なりに取り組んでいたらある程度結論が出るまでに結構時間がかかってしまいました。

私なりの解釈と感想を書いてみようと思います。

 

薔薇王の葬列(13) (プリンセス・コミックス)

薔薇王の葬列(13) (プリンセス・コミックス)

  • 作者:菅野文
  • 出版社/メーカー: 秋田書店
  • 発売日: 2020/02/14
  • ※DMM電子書籍で購入すると初回半額クーポンが利用できます。ドトールでコーヒーを飲むより安く薔薇王の葬列が読めます!
 

 

 

 

感想のような解釈のような

運命の克服とリフレイン

度々提示されてきた「運命」というモチーフの克服、そして別の側面からの再提示。
13巻はこれが大きなテーマだったのかなと思います。
この部分の表現がメタファーによって提示されており、非常におもしろかったです。

 

運命の克服:リチャードの世

『薔薇王の葬列』の世界では神と神の定めるルールが社会を支配し、人には神の定める「運命」が課されていると考えられています。
それに対するカウンターとしてリチャードがたどり着いた概念が悪魔と「リチャードの世」と言えると思います。

 

第一部のリチャードは神が定めた運命が支配する王宮からヘンリーと共に森に逃れようとしますが、それを達成することができませんでした。

第二部のリチャードは、当初は王家を守ることで自らを守ろうとします。
しかし、バッキンガムという半身を得たことにより、神の定める「運命」が支配する世界を覆し、欲しいものは自分の手で掴み取る世界である「リチャードの世」をつくる道へ踏み出します。
そして、今13巻でついに「リチャードの世」が成立しました。

 

57話、58話のリッチモンドとリチャードの対決は「運命」と「リチャードの世」、つまり神と「リチャード」の対決であり、これまでリチャードを虐げてきた過去の世界とリチャードが新たにつくる世界の対決のメタファーであったと思います。

 

宴の1日目はエドワードの宴を引き継いだもので、過去の象徴とも言えます。
祝祭劇でリッチモンドはルシファーを演じつつ、リチャードが悪魔であることを暗示します。
57話、リッチモンドはキリストの「私は見た… 悪魔が天の玉座から堕ちるのを……!」という言葉と共に登場しており、悪魔を演じながら、彼の真の立ち位置は神の子です。
2日目の宴の前の「神は最後にこの私を選ぶんだ」というモノローグも、ルシファーの堕天における神の子の立場とかけているのだと思います。

一方、「俺の楽園は何処にある!」という悪魔のセリフに対して「”芝居の続き”を見せてやろう」とリチャードが囁きます。

 

 

 

宴の2日目はリチャードが考案したリチャードの宴です。
「違うものになって楽園に来られたし」と書かれた招待状がリッチモンドに届けられます。
祝祭劇ではルシファーの堕天の次はアダムとイブの物語であるというリードがあり、セオリー通りに考えるなら、「楽園」は神の創った「アダムとイブの楽園」をさすことになります。
そこに「違うもの」とあるわけですから、「アダムとイブの楽園」を崩壊させた悪魔以外のものになれという招待と解釈できます。
リッチモンドもそれを踏まえた上であえて悪魔の扮装で乗り込み、「楽園」の崩壊を狙います。

しかし実際には待ち受けていたのは血塗れの悪魔・リチャードによる「悪魔の楽園」です。

神の物語であれば、ルシファーの堕天の次はアダムとイブの物語と決まっていますが、悪魔の物語には「定めなどない」わけです。
これにより、リチャードが悪魔であると印象付け、罪を押し付けるというリッチモンドの作戦は失敗します。
また、これは前日の「俺の楽園は何処にある!」と叫んだ悪魔へのリチャードの返答と言えるでしょう。

 

宴におけるリチャードとリッチモンドの対決はひとまずリチャードに軍配が上がったと言えます。
これは、リチャードが神の定めた「運命」を一旦克服したとも言えると思います。

 

ところで、リチャードに意味するところを即座に理解し、リチャードに執着を見せるリッチモンド
リチャードを愛する第三のヘンリー投入というところでしょうか…

あと2020年的に考えると、リチャードの世のほうが真っ当な感じですよね…

 

運命のリフレイン:大聖堂の側の貧しい娘

社会的な部分では一旦、運命を克服したと思われるリチャードですが、一方でプライベートの方でも運命の示唆が再度なされていると思うのですよね。

 

バッキンガムとリチャードが結ばれるも、かつてヘンリーと過ごした屋敷を訪れることになり、ヘンリーとの過去がよみがえります。
そして、外には記憶を失ったかつてのヘンリーが迫る…と。

 

これは屋敷でかつてリチャードとヘンリーが過ごした時、エド兄によって語られた大聖堂の側の貧しい娘の話を想起させます。
リチャードが運命を克服できるなら、安直に考えて、過去の象徴の数々が押し寄せる中、バッキンガムを選びきれるかみたいなことなのかなあ…

ここの部分はまだ結論がでてないと思うのでなんともいえませんが…


テーマはさておき、私はかなりべた好きの人間なので、ここは思いっきり揺れているリチャードがみたいという思いがあります。
死んだはずの過去の恋人が現われたなら、エドモン・ダンテスに再会したメルセデス並みに揺れてほしいし、記憶を失ったなら、思わせぶりに「マリンカ…」と呟いたり、「あんた…いま小倉といったな…」と問い詰められたりしてほしいです。

ものすごくドラマチックに終わったので、次巻以降もとても楽しみです。

 

ところで、すごくどうでもいいのですが、58話扉、バッキンガム、野原遥さんポーズですね…
二部初登場も野原遥さんでしたが…

 

プリンセス 2020年 03 月号 [雑誌]

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  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 秋田書店
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