しばらく海外出張に出ていて、そこが恐ろしく電波の悪い場所だったため、いろいろ取り残されておりました。
2019年マンガ大賞で田村先生の『ミステリという勿れ』が2位受賞だそうですね!
このマンガがすごいに続いての受賞、6月からは『7SEEDS』がアニメ化されるということもあり、世はまさに田村由美旋風!
私は少女期から田村作品が大好きなのですが、自分の好きな作者さんや作品が注目されるのはやっぱりすごく嬉しいです。
マンガ大賞のコメントをみると、「まさか田村先生がミステリーとは!」「7SEEDSの次にミステリー!」というコメントが多いですね。
そうよね、『BASARA』や『7SEEDS』、『巴がゆく!』のイメージが強いよね。
ふふふふふ…。
田村先生はミステリーもめちゃくちゃ面白いのだよ!『彼女は誰を殺したか』や『4人の女』など、傑作がたくさんあるのだよ!
加えて、ミステリー以外にもホラーもめっちゃいいのだよ!
さておき、『7SEEDS』は私にとって大切な作品なのでいつか感想を書きたいと思っていました。
完結から結構時間がたってしまいましたが、このタイミングで書こうと思います
あらすじ
主人公ナツは目が覚めるとなぜか知らない人たちと荒れ狂う海のボートの上にいました。
昨日の夜、パジャマで家のベットに入ったはずなのに、なぜか外行きの服をきてスニーカーを履いていました。
荒れまくる海の上、乗っていたボートが転覆しかかり、知らない人たちとなんとか近くの島へ避難。
どうやら他の人たちも、昨夜は普通に家で眠ったのに、起きたらなぜかここににいたとのこと。
たどり着いた島は無人島のようで、危険な生物もたくさん。
初めて会ったメンバー同士のサバイバル生活が始まります。
一体なぜ、こんなことが起きたのか?
ここはどこなのか?助けはくるのか?
皆、苛立っています。
そんな中、ナツはメンバーの名前と島に小さな違和感を覚えるのでした。
…と、こんな感じで、サバイバル&謎解きな感じで物語が始まります。
改めて読み返すと、1巻はかなり謎解き要素が強いですね。
その後は謎解きよりもヒューマンドラマといいますか、群像劇に入っていきます。
ともかく、号泣必至です。
感想
読み終わるまで手を止められない物語のおもしろさ、壮大な世界観、テーマ性、本当に素晴らしい物語だと思います。
しかも、田村先生は『7SEEDS』の前に『BASARA』を描いていて、それが少女漫画界のレジェンド作品なわけで。
その後にその『BASARA』を超えていく作品を生み出すってすごすぎるんですよ。
自分で作った世界記録を自分で塗り替えていくアスリートのようです。
田村先生は少女漫画界の羽生選手で羽生名人。
逃げ道のない人生の悲惨さ
私は本当に安居が不憫でならないんですよね。
いろいろなメッセージの詰まった作品だと思うのですが、彼からは「逃げ道のない人生の悲惨さ」を感じてしまいます。
嵐が安居に「人には逃げ道がなくちゃいけない」と言ってましたが、それはテストの時もそうだったし、未来に来てからもそうだったと思うんですよ。
未来に来てから、夏のAと春秋冬合併チームが一緒に暮らしだすわけですが、全然上手くいきません。
特に花と安居。
安居は一般人なんて大嫌いなくせに、「一般人を守らねばならない」というマインドから抜けられない。
花の方も、最初から無理だって思ってるのに、周りの人間のためを思って我慢しようとする。
どちらも「しなくちゃいけない」っていう責任感や義務感が強すぎて「逃げる」という選択肢がない。
最悪なのは、花が貴士先生の娘だとわかってからも一緒に暮らし続けてるところです。
「できない」「逃げる」って言えない二人が無理しすぎて最後には被害者と加害者になってしまうという悲しすぎるエピソードだと思うのです。
安居と花って、最初は犯罪被害者の遺族と犯人の娘みたいな間柄じゃないですか。
(途中で涼や安居が花やハルを襲って被害者加害者関係が逆転するけど)
花が貴士の罪を背負う必要はないけど、花がいるだけで安居は傷つく、これはもうどうしようもないことだと思うんですよ。
現代社会なら、第三者が入ってこの2人が接触しないで済む仕組みにしますよね。
自分の兄弟を殺した犯人の娘と同居を強制されるなんてありえないじゃないですか。
それを、12人しかいない地域で全員一緒に暮らして、全員が当事者、しかも新巻以外は全員20代前半より若いという子供しかいない世界。
こんな環境を作れば、必ずどこかで爆発すると思うんですよ。
で、1回罪を犯してしまえば、必ず被害者と加害者が発生してしまう。
そうなったら、被害者は傷つけられたことをずっと抱えて生きていかなくちゃいけないし、加害者はその罪をずっと背負っていかなくちゃいけない。
そうなったら二度とそうなる前には戻れないんですよ。
だからこそ、そうなる前に、安居にも花にも逃げ道が必要だったと思います。
花は何度も夏のAとはやっていけない、って思ってる。
最後には逃げようともしていた。
でも先送り先送りにして、結局殺されちゃう。(生きていたけども)
これって現代でも一緒だけど、ヤバいって思った時に逃げないと本当に逃げられなくなるってことだと思います。
花の場合は逃げることのリスクが現代とは比べ物にならないくらい高いんだけど、その場にい続けることが1番リスクが高いことに実は気がついている。
でも、周りのためとか、父親のした事を考えると仕方ないとか、そのリスクを見ないふりをし続けて、最悪の結果を迎えてしまう。
一方、安居の方も被害者意識から横暴に振る舞って最後は自分が加害者になってしまう。
結局、当事者間で解決出来る話ではないんだよね。本当は第三者が間に入らなきゃいけなかったけど、それができる人も誰もいない。
逃げ道のない世界で被害者と加害者にならざるを得なかった花と安居が本当に不憫です。
最後、全てのチームが一緒に住むことになりましたが、この世界に居場所がない人はどこにいればいいんだろうとも思いました。
生きる価値
新巻さんを見ていて、人生が壊れるほど強烈に苦しい思いをした人はどうやって生きていけばいいんだろうか、と考えてしまいました。
その後の人生で「生きる意味」を見つけることが出来るものなのだろうか。
ここでいう「生きる意味」というのは社会的なものではなく、個人にとってという意味です。
誰かの役に立ってるとか、誰かに愛されまくってるとか、他人に評価されるような価値がなかったとしても、「嵐君すごく好きだけど、片思い。でも彼をみているだけで幸せ!人生楽しい!」って感じだったら「楽しい」=「(自分にとって)人生は生きる価値がある」と思えると思うんですよ。
逆に、社会的には評価されていても、自分にとって人生がつらいだけのものだったら、人生を生きる価値についてわからなくなってしまうと思います。
新巻さんくらいつらい人生を歩んできた人って、その後どうやって生きていけるんだろうと思ってしまう。
私の中で、新巻さんのエピソードは『7SEEDS』中、壮絶さNO.1です。
クモに襲われた時も、現世に彼を引き留めるものはなにもないっていうのが悲しい。
それだけ、一人で生きていることが彼にとってつらい。
でも、つらくても悲しくてもずっと生きている限り、彼はそれを抱え続けないと思うと、あまりにも苦しい人生だなと感じます。
今後は、新しいペットを育てて、アユと愛し合って少しでも生きる希望を持てるようになってほしいですね…。
まとめ
アニメは夏Aの話も絶対やってほしいです。
安居の在り方については外伝でしっかりまとまっていてよかったです。
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