※※旅行記を書くのに必要な範囲で、『薔薇王の葬列』、『リチャード三世』、史実ネタバレがあります。
「A horse! a horse! my kingdom for a horse!」
『KING RICHARDⅢ』より
2012年、イギリスの都市・レスターでリチャード三世の遺骨が発見されました。長い間、リチャード三世の遺体はソア川に投げ捨てられたと信じられていました。しかし実は最期の戦いを挑んだボズワースのほど近く、レスターの街中に約500年もの間眠っていたのです。
発掘された遺骨は2015年に再度埋葬されました。再埋葬式が行われ、『薔薇王の葬列』の作者、菅野文先生も参加されたそうです。
発売中の月刊プリンセス、薔薇王本編はお休みですが代わりに3月に行ったイギリス旅行のレポ漫画が載っております。よろしくお願いします! pic.twitter.com/nH4pcm78Kc
— 菅野文【薔薇王の葬列】12巻&画集発売中 (@kanno_aya) June 5, 2015
現在は遺骨はレスター大聖堂に納められ、遺骨の発掘跡地にはリチャード三世ビジターセンターが設けられています。ヨークまで行ったならレスターも行こうかな…と足をのばし、訪問してきました。
ヨーク訪問記
リチャード三世ビジターセンター
二階建てで1階はリチャード三世の生涯について、2階はリチャード三世の発掘についての展示がされています。1階の展示はかなりドラマチックに作られていて、シェイクスピアファン、『薔薇王の葬列』ファン、ヨーキストの心を掴むつくりです。
展示の始まりは王座と王座に置かれた二輪の薔薇。薔薇にスポットライト。わかってらっしゃる…
隣の部屋には薔薇戦争の主要人物や出来事についてのエキシビジョンがあります。部屋の中央にはキーパーソンのプロフィールをまとめたトランプが。我らのリチャードはもちろんK(キング)です。
見学者が一息つけるカフェもあります。その名も「white boar cafe」。白いのカフェ。入り口には巨大な白猪の紋章が。
ドアのサイズ等と比べて、サイズ感お分かりいただけるでしょうか。インテリアはひたすらリチャード三世。塗り絵ができるコーナーもあります。もはやコラボカフェ。
2階の展示はリチャード三世の発掘について。リチャード三世の発掘は偶然ではなく、遺骨がそこにあるはずだと信じた人たちによる情熱によってもたらされたものだったそうです。始まりは2004年、フィリッパ・ラングレーさんという女性が「ここにリチャードの遺骨があるに違いない」と思ったことから「Looking for Richard Project」というプロジェクトを開始。最終的に2012年に発掘調査、様々な検証を経て2013年にリチャード三世の遺骨を発見したと声明を出すに至ったとのこと。
遺骨のレプリカや遺骨から想定した胸像などが展示されています。結構肖像画と似てる。
最後はリチャード三世が発掘された現場。センター内に発掘された場所がそのままの形で保存されています。500年以上リチャード三世が眠っていた場所。
全ての展示が終わったらミュージアムショップでお買い物ができます。グッズに関してはヨークもアツいがレスターもアツい。そしてヨークが白薔薇ハコ推しならレスターはリチャード単独推し。
白猪の編みぐるみセット(難易度2パターンあり)
リチャード三世の座右の銘「忠誠が我を縛る」と彫られたリング
オーナメントにカップに文具に馬。
ちなみにここの店員のお兄さんが大変日本史好きで私が日本人だとわかると、日本の戦国時代に対する愛を語ってくれました。
店員さん:戦国時代がとても好きなんだ。武田信玄が好きだ。本多忠勝もいい。蜻蛉斬!
私:日本でも戦国時代は人気だよ。武田信玄の時代とリチャード三世の時代はまあまあ近いよね。リチャード遺骨が発見されたのって日本で言えば織田信長の遺骨が発見されたみたいな感じ?
店員さん:そうかもしれない!言うなれば、ボズワースは関ヶ原みたいなものだよ!リチャード三世は明智光秀…違う三成、石田三成みたいなものですよ。そして徳川家康が江戸幕府をつくる。東軍と西軍だ!
私:私も展示みながら同じことを考えてました。ボズワースは天下分け目の戦いだよね。明智光秀はウォリック伯爵っぽくない?
店員さん:まさに!ウォリックは明智光秀だ!反旗を翻すんだ!
オタク対オタクの会話。しかも、彼の名前と私の苗字が一緒だった。
レスター大聖堂
リチャード三世ビジターセンターの後は隣のレスター大聖堂へ。ヨークとリチャードの遺骨をめぐってバトルを繰り広げたそうです。
聖堂の脇にはリチャードの銅像があります。
聖堂内にはリチャード三世のための特別な場所があり、そこが墓所となっています。墓石には彼の座右の銘「忠誠が我を縛る」と刻まれています。
32年という短い生涯の大半を戦乱の中で過ごし、戦いの中で死に、死後約500年にわたってレスターの地中に眠っていた人。壮絶な人生の中でどんなことを考えて生きていたのかなあ、などとぼんやり考えました。彼自身の人生も短いけれど、その人生の中でいろんな人を見送った人生でもあったと思います。
レスターは街全体がリチャード推しといった雰囲気で、リチャード三世を愛する人にとって満足度が高い訪問地だと思います。時間があればボスワーズまで足を伸ばしてみたかったのですが、今回は達成できず。定期的に楽しい催しもやっているみたいです。
Bosworth Battlefield Heritage Centre