It's a rumor in St. Petersburg

アラサー学生です。主にまんがの感想を書こうと思っています。

【感想】『薔薇王の葬列』58話 プリンセス2019年11月号

※感想を書くのに必要な範囲でネタバレがあります。

 

プリンセス2019年11月号『薔薇王の葬列』58話の感想です。
今号は前半と後半に大きく山場があった回でした。
今号の表紙について、ツイッターで「愛人と正妻」と仰ってる方がいて、ぴったりだな!!と思いました。

 

プリンセス 2019年 11 月号 [雑誌]

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感想

前半:ツイッター薔薇王民狂喜乱舞大発狂

私たちのバッキン・ボーイがやっとリチャードに対する愛を自覚してくれました。
ボーイミーツガール。
しかし、まだキスできない2人。
体の関係はあるのに両片思いです。
TLかもしれない。
それにしてもリチャードのキスは重いですね。
リチャードどキスした人は58話までにジャンヌ・ヨーク公エドワード王子・エドワード4世・ヘンリー・アン・イーリー司教の7人で、内5人は既に死亡。
存命率71%です。
死んでからキスしてる場合もありますが。
バッキンガムもキスしたら死んでしまうのではないだろうか。
キスは死亡フラグかもしれない。
代わりにイーリー司教を捧げよう。

後半:リチャードvsリッチモンド

正式にリチャードを囲む3人のヘンリーが出揃いました。
あなたの最も愛した者はヘンリー、あなたの半身はヘンリー、あなたの敵はヘンリー。
フランス語になるとヘンリーはアンリと読むらしいです。
3アンリの戦いエピソードゼロ。

今回、後半はかなり読解に時間がかかりました。
3つくらいの意味掛けが同時にされているのかなと思いました。

1、ルシファーの堕天

「私は見た… 悪魔が天の玉座から堕ちるのを……!」
リッチモンドの冒頭のセリフは聖書の一節から取られているのかなと思います。

今日の聖句

エスの言葉です。
ルシファーについてググってみたところ、神がイエスばっかりかわいがるのでルシファーは嫉妬して神に反逆しちゃったという説があるそうです。

ルシファー

冒頭の発言は、王座を巡る争いを「ルシファーの堕天」に見立て、最後に神に選ばれるイエスリッチモンド、ルシファー:リチャードとして発言しているのかなと思います。
なんなら、神の子リッチによるルシファー・リチャードに対する「堕としてやるぜ!」と言わんばかりの宣戦布告なのでは?と思ったのでした。

2、楽園追放

やる気満々のリッチモンド、悪魔の扮装でリチャードの宴にやってきます。
説教劇ってどんなものか調べてみたのですが、神秘劇ってものと近そうな気がします。
リッチモンドも言っているように、「ルシファーの堕天」の次に来るのは「人類の創生と堕落」、アダムとイブの「楽園追放」の物語のようです。

神秘劇 - Wikipedia

今度のリッチモンドはリチャードの治世を「楽園追放」の物語に見立てています。
この意味掛けにおいて、リッチモンドは扮装通り悪魔です。蛇に化けてイブを唆し知恵の実を食べさせる役です。
そして、王・リチャードは創造主である神、リチャードの治世が楽園です。
物語ではイブが蛇にそそのかされた結果、楽園は崩壊します。
悪魔であるリッチモンドの登場=リチャードの治世の崩壊のはじまりを示唆しているのだと思います。

実際のところ、リッチモンドは前日に役者たちを殺害し、罪をリチャードに着せています。
ここでリッチモンドがリチャードを模した悪魔扮装で現れることで、神を気取るリチャードは悪魔であることを周囲に想起させるのが狙いかと思います。
つまり、ここでは聖なるものを堕天させる意味において「ルシファーの堕天」、楽園を崩壊させる意味において「楽園追放」の意味掛けが同時に進行していると言えると思います。
運命は決まっているとリッチモンドのモノローグにありますが、全ては劇の筋書き通り、結末はルシファー堕天で楽園崩壊だぜ!ってことなのかなと。
しかし、迎え撃つリチャードは神で血塗れの悪魔で冥府の渡し守。
リッチモンドを神の楽園ではなく、悪魔の楽園に向かえ入れます。
これが57話で「芝居の続きを見せてやろう」「“リチャードの宴”を見せてやる」と言ったことへのアンサーかと思います。
リチャードの楽園は悪魔の楽園だから悪魔が来たってノープロブレム!運命などないし、なりたいものになれる!筋書なんて俺が変えてやるという強い意志を感じます。
リッチモンド的には神を気取るリチャードの楽園の物語が始まると思っていたら、まだ堕ちてないはずのルシファーがいきなりサタン状態で現れたって感じでしょうか。
さすが俺らのリチャードですが、リッチモンドとアンがすれ違ったシーンに一抹の不安を覚えます。

3、アンとリチャードの関係性について

ラストシーンでアンがリチャードに「私達は“アダム”と“イブ”…?」と切り込みます。
今度はアンとリチャードの間で「アダムとイブ」の物語が掛けられています。
リチャードは王冠のない時は自身をただの悪魔と認識しているわけで、この2人はアダムとイブではなく、蛇とイブなのかなと思ったり。
しかし、もっと遡ってみれば、リチャードはバッキンガムに唆されて王冠を目指し、アンもそれを受け入れたわけだからバッキンガムが蛇でリチャードがイブ、アンがアダムだともいえるかも。

 

 

 

幕間:エドワード王子の帰還

愛すべきエドワード王子がお帰りになりました。
アンは歳をとったのに貴方は17歳のままなのね。悲しいよ...
次号、アンがリチャードの秘密に切り込むのかな?と思うのですが、それをきっかけにエドワード王子の思いについて触れることもあるのでしょうか?
薔薇のブローチについてもそろそろ封印が解かれるのかなぁ。

 

今回はリチャードとリッチモンドの「運命」というものについての捉え方の対比が描かれていましたが、王子こそ、神などくだらん・運命なんてくそくらえ論の第一人者。
王子よ、どうぞリチャードをお守りください。

 

余談:今月頭、ドイツに旅行に行ってきたのですが、書店でドイツ語版『薔薇王の葬列』を見つけちゃいました。
7巻、かの名シーンで王子がリチャードに「イッヒリーベディッヒ」って言っていましたよ〜!

 

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ドイツ語版『薔薇王の葬列』

 

上記の理解はこじつけがましい部分もあるかなあ。
しかし『薔薇王の葬列』は深読みしながら読むのが楽しい作品だなと思うのです。
来月も楽しみですね!

 

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