It's a rumor in St. Petersburg

アラサー学生です。主にまんがの感想を書こうと思っています。

シェイクスピアのグローブ座で『ヘンリー六世』をオンライン視聴してみた

ロンドンにあるシェイクスピアのグローブ座がコロナによる休館の影響で閉館の危機に瀕しているそうです。
私も二度ほど訪れたことがあり、かなり楽しい劇場なのでこのニュースはとてもショックです。

必要な援助の額は約6億5600万円とのことで、しがない個人のわずかなお金がどれだけ助けになるかわかりませんが、有料で過去の上映作品を観てみたりしております。
これがなかなかおもしろいのと、他にも誰か興味を持ってくれる人がいるかもしれないので視聴方法や感想などを書いてみようと思います。

 

 

 

シェイクスピアのグローブ座について

グローブ座というのは元々はシェイクスピアが活躍した宮内大臣一座の劇場です。
ところが、この劇場は17世紀半ばに清教徒革命によって閉鎖・取り壊しになってしまいます。

これを、元々のグローブ座から230m離れたところに1997年に復元したのがシェイクスピアのグローブ座とのこと。(wikipedia調べ)

 

ともかく趣たっぷりな建物で公式HPやアプリからバーチャルツアーをすることもできます。

 

 

劇場前にはスナックやビールを売るスタンドがあり、飲食しながら観劇できます。
建物だけでなく、シェイクスピアの時代の庶民の娯楽としての劇場のあり方が再現されています。

また、屋内劇場も併設しており、これまた当時の劇場を再現しています。
劇場のシャンデリアは係の人がろうそくに一つ一つ火をともしています。
今や世界遺産でもシャンデリアにはろうそく型の電球を使う時代。
ろうそくのほのかな灯りは古い時代の暗闇を観る者に教えてくれます。

 

 
 
 
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そんな感じで、シェイクスピアのグローブ座は単に劇を観るだけでなく、この劇場で観るということに価値があると思わせてくれる劇場だなーと思っております。

 

 

 

過去の上演作品の視聴方法

公式HPにグローブプレイヤーという視聴ページがあります。

 

Globe Player | Shakespeare's Globe

 

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左はじに動画のカデゴリーがあり、観たい作品を検索することができます。
ここに名前のない作品でも「Search」欄に作品名を打ち込んで検索するとでてくる場合もあります。

有料動画を視聴するにはアカウントを作成する必要がありますが、必要な情報はメールアドレスのみ。
超簡単に作成できます。

 

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観たい作品をみつけたらRentもしくはOWNをクリック。
RENTの場合は7日間、OWNの場合は期限なしで視聴することができます。
支払いはカードのみです。
右下からサンプル動画を観ることも可能です。
『ヘンリー六世 第三部』の場合はヨーク公に王座を譲ると言っちゃったヘンリーがマーガレット様とエドワード王子に責められまくるシーンです。

 

『ヘンリー六世 第3部』感想

やはり、私がまず観たいのは『ヘンリー六世 第3部』でありまして、とりあえずこの作品を観たので、感想も書こうかと思います。
この作品については、グローブ座ではなく、野外公演なんですが、後半すごい雨が降ってたりして、これはこれで味があります。
時間は観客や関係者のインタビュー込みで二時間半弱。
全編英語ですが、英語が苦手でも基本的な筋を事前に頭に入れておけばだいたいわかるかなと思います。
『薔薇王の葬列』読者や『7人のシェイクスピア』読者なら問題なしだと思います。

全体的な感想

最初に観客へのインタビューが入ります。

インタビュアー:「誰が一番好き?」
観客:「私はリチャード三世が好き、もちろんヘンリー六世もいいけど…」
インタビュアー:「つまりあなたはグロスタリスト」
観客:「そう、私はグロスタリスト」

グロスター公爵リチャード、のちのリチャード三世推しの当方としてはこの時点で大満足。

 

ネタバレになりますが、この上演ではラストシーンがともかくかっこいいです。
戦争に勝利し、苦難よさらば、終わりなき喜びが始まる!!と宣言するエドワード王。
傍らに妻エリザベス、二人を囲む王弟ジョージとリチャード。
リチャードは生まれたばかりの王子をあやしています。
一枚の肖像画のように六人が寄り添いあうシーンで終幕。
…と思いきや、最後の瞬間に、王子をあやしていた王弟リチャードがくるりと観客に視線を向けます。
もう、この一瞥がゾワッゾワするんですよ。
劇中の人たちは新しい時代を無邪気に喜んでいるのですが、観客はこの一瞥で新たな動乱が始まることを予感するんですよね。
最後に最後にすっごいのが放り込まれるわけです。
この一瞬のためにこの劇はあったのだ…!とぞくっとした瞬間で幕。
すっごいかっこいい終わり方でした。

これをみたらあなたも絶対グロスタリスト。

お芝居でみるシェイクスピア

実は私、シェイクスピアの名前は昔から知っていたものの、お芝居を初めて観たのはここ最近でした。
有名な作品はむかーし翻訳版の戯曲を読んだことがあった気がするのですが、正直当時はよくわからず。
『ヘンリー六世』については、アマゾンプライム会員はキンドルで無料で読むことができるので最近サーっと読んでみたものの、「いっぱい韻踏んでてすごいな~」ぐらいの感想。
ストーリーのおもしろさやセリフの美しさを楽しむことができているかというと、これまた正直よくわかんないという感じでした。
文学的素養の欠如を感じます。

 

しかし、これが劇でみるとおもしろいんですよ。
戯曲を読んでいた時には単なる文章として捉えていたセリフが、舞台で役者さんが演じているのを観ると感情移入して観れるというか。
お芝居だと役者さんの動きや声の発し方で「ああ、この人傷ついているんだ」「ここは笑うとこね」みたいなことがよくわかるんですよね。
フランス王ルイとマーガレット様とウォリックが一堂に会するシーンは、あ、これコメディーバートだったんだ!と劇を観て初めて気づきました。
マーガレット様のHateがLoveに変る瞬間は笑うとこなんだよ。
あと、この上演ではボーナ姫の演技力がめちゃくちゃ高くて、清らかな視線と姫オーラに心が清められます。

 

 

 

『薔薇王の葬列』・『7人のシェイクスピア』ファンとしてみる『ヘンリー六世』

この二作のファンとしては、作中で登場するシーンやセリフを実際に英語で聞けるというのがやはり嬉しいところ。
「ああ、あのシーンはここに由来しているのね…」としみじみ思います。

 

特に印象的だったのは、劇の前半のラストでリチャードが王座への野望を語り、「Can I do this, and cannot get a crown?」と観客と自らに問いかけるシーンです。

ああ、原作のリチャード、アンビシャーーース!
原作は原作でこんなにかっこいいんだ~~~!!
ちなみにここは、『薔薇王の葬列』13巻でリッチモンドさんが「王冠を得られぬ道理があるかい……?」とルーキーセンセーションをかますシーンの基になったシーンだと思われます。
原作のアンビシャス・リチャードを観ちゃうと、リッチモンドの悪人ムーブも許したくなっちゃうな…

 

薔薇王の葬列(13) (プリンセス・コミックス)

薔薇王の葬列(13) (プリンセス・コミックス)

 

 

ラストシーン手前のヘンリー六世とリチャードの対決のシーンも非常によかったです。
ここは『薔薇王葬列』の作者の菅野先生がラストのこの二者の対比が『薔薇王の葬列』製作へのインスピレーションとなったとインタビューで語っていらっしゃったシーンでもあります。

 

 

劇中でみると本当に二人の対比が明確にわかりました。
悲しみ嘆き争いを避けて美しいままのヘンリーと、悪魔のにやにや笑いと戦いで血と埃にまみれたリチャードの二人が対立して、もみ合う。
なんか、一巻の表紙がああなった意味がなんかわかった気がする…!
『薔薇王の葬列』に対する理解がなんか深まった気がする…
(気がするだけ…)

 

『7人のシェイクスピア』ファンとしてはマーガレット様を形容する名台詞、「女の皮をかぶった虎の心!」を聞けたのが嬉しかったです。

そしてラスト、『リチャード三世』に導入していく様の見事さよ…!
セリフを音声で聞くと、韻やリズムを感じられて、「これがリーの詩や…」という気分にさせられます。

 

 

ところで、マーガレット様がヨーク公を処刑するシーンで「Off with his head!!」というセリフがあります。

最近ツイステをはじめた身としてはイギリス王妃の「オフ・ウィズ・ユアヘッド」が聞けた!という喜びもありました。

 

 

結構長い間、シェイクスピアなんてよくわかんない、という感じの人間でしたが、実際に観てみるとおもしろいです。
いきなり有料視聴はハードルが高いな~という方には、You tubeで『マクベス』や『真夏の夜の夢』などが期間限定で無料公開されていますので、そちらを観てみるのも良いかもしれません。

 

 

他にもチケット制の「ストーリーテリング」というオンラインイベントも企画されています。
役者さんやディレクターが司会をしてシェイクスピアワールドに浸れるゲームなどを行う子供向けイベントだそうです。

 

 

オンラインからでも参加できる・視聴できる企画がいろいろあるようなので、シェイクスピアとグローブ座に興味のある方、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

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